
弊ギャラリーディレクター正木なおによる VAGUE KOBEでのキュレーションプロジェクト、かじおかみほ 写真展のご紹介です。
写真家の かじおかみほ は、サンフランシスコとモントリオールで絵画と写真を学んだのち、東日本大震災を機に制作を開始。2019年にはフランス国内で出版された写真集でもっとも優れた1冊に贈られる権威ある写真賞、ナダール賞を日本人として初受賞し注目されました。本展覧会は震災11年後に出版された写真集『And, do you still hear the peacocks?』の中から拾い上げられた作品たちで紡ぐ展覧会プロジェクト第一弾となります。
初日2日間は かじおかみほもパリより帰国し、ディレクターの正木なおと共に在廊します。
尚、オープニングイベントには福島の酒蔵 仁井田本家による試飲会も開催します。
ぜひ多くの方のご来場をお待ちしております。

開催に寄せて
写真家 かじおかみほ。
最初に出会ったのは彼女が暮らすパリだった。帰国直前で慌ただしい心の私の無作法な出会いを前に、彼女は大切そうに持ってきた包みをひろげ、不思議な所作で”本”と呼ぶその箱に入った紙ををゆっくりと開いたり次の扉へと向かったりした。特殊な装丁のその本は、文字が折りたたんだページの裏側に印刷されており、覗かなければ読めないようになっている。
その紙の上のモノクロームの写真たちは、小さな記憶の断片のように空間にたゆたい、觀手の視点を遊ばせる。寂しげでもあり、儚げでもあり、心の琴線に触れる美しいその本は、東日本の大震災の当時、報道の記者として取材に明け暮れていた彼女がメディアでは伝えられなかった感覚やなにかがつもり重なり満タンの箱からスルリと飛び出してきたものでもあった。
その感情と記憶は、かじおかが大学時代から遠ざかってきたアートの世界へ戻るきっかけとなった。
「カチッと何かが切り替わる音がした。」とかじおかは言う。
かじおかは、写真という媒体を介在しながら自己他者も超えた記憶という風景、切り離せない時間という風景を描き出そうとしているようにみえる。
震災から5年後に生まれたこの写真の断片が連なる本を、その切れ端の重なりをめくりながら、わたしはいつしか涙していた。
触れたかったなにか、触れられなかったなにか。
この本を、重なりゆく縁と可能性の中で毎年どこかで桜の花びらに出会うように、その儚く不確かな記憶という感情を風景にするように、この作品を媒体に旅をし、出会い、暮らしの風景と交差させていこうと思った。
毎年3月、このあたりの季節に開催するのがいい、どこかで小さくても大きくても、1点でも、たくさんでも、プライベートでもパブリックでも、日本でも海外でも。
きっとその場所へつれていってくれると感じる。
東日本の震災から14年、そして、阪神・淡路で起きた地震から30年が経った。
不思議なタイミングでカチッと時計が重なり、神戸の街 でこの試みを始められることになったことを心より嬉しく思う。
正木なお 2025年春
Miho Kajioka『And, do you still hear the peacocks?』2025 開催に寄せて
「And, do you still hear the peacocks? 今デモ マダ クジャクノ声 聞コエマスカ?」In Collaboration with Gallery NAO MASAKI
2025年2月21日(金)ー3月10日(月)
毎週 金〜月 12:00-18:00
※初日2日間は作家&ディレクター在廊
オープニングイベント/仁井田本家(福島)による日本酒試飲会 開催
VAGUE KOBE
兵庫県神戸市中央区海岸通9-2 チャータードビル4F
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