vol.110
Painting/富山宜子 Noriko Tomiyama (1943〜)
痕跡 TRACES OF PAINTING
2018.2.24-3.11
日々の痕跡
マチエールは画家の指紋と比喩されることがある。
日々の痕跡は、まさにその人しか生み出せない指紋のようなものかもしれない。
塗り重ね、引っ掻き、剥がし、そしてまた描く。
十数年前に初めて作品と出会ったとき、富山宣子氏は愛する家族を喪い、失意の底にあった。
絵画の発表をする気はもうないという。わたしは内装を手がけた喫茶店の壁面に飾るための数枚だけを譲り受けた。
それからも時々、連絡をして近況を尋ねる度に「日々、描いています」との答えが返ってくる。
数年が経ち、ある日同じように連絡をすると「もしかしたら、故人も望んでくれているかもしれない」と展覧会での発表が再開した。
画家の日常は作品の中にある。日々の色は多様で何気のない出来事、喜び、哀しみは積み重なり、絵画としての痕跡を残す。
フィールアートゼロで発表して10 年目となる富山宜子氏の絵画展、多くの方にそれぞれの人生
の痕跡と重ねてご覧いただけるなら幸いです。
正木なお
2018 年2 月
富山宜子 Noriko Tomiyama
画家。1943年、三重県松阪市に生まれる。津市の私立中学にて美術教諭と出会い、絵画活動を始める。
8 0 年代半ばより名古屋、四日市、津、松阪などで個展を開催。60歳で最後の個展とするが、それ以降も絵を描き続ける日々。
2008年Gallery feel art zero [現Gallery Nao Masaki] にて「色彩の絵画」開催、反響を呼ぶ。
gallery feel art zero (現Gallery NAO MASAKI)にて
<個展>
2008年9月「色彩の絵画」
2010年10月「色彩と描線」
2013年4月「70 paintings」
2016年2月「春色」
<企画展>
2 0 15「something new with feel art 10」