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vol.117

現代の書 ARTSHODO 三人軌跡

Ayako Someya/ハシグチリンタロウ Lintalow Hashiguchi/山本尚志 Hisashi Yamamoto

2019.1.26 - 2.10

新しい時代や感覚を予感する時がある。

今、この空間に広がる熱量と才能、ここに繰り広げられている瞬間がそうであるように。。。

 

一昨年、現代書家の山本尚志氏の個展を開催した時、ふっとアクシデントのように出会ってしまったそれを、会場を訪れた多くの人たちがしっかり眼を開いて受け止めたことに感動を覚えたのも記憶に新しい。

 

私は、昨年、山本氏とのご縁もあり、「ART SHODO TOKYO 2018 」というムーブメントを審査員という形で目の当たりにし、その蠢きを身体で感じ、しっかりと見てみたいと思うようになった。今回はその中でも、宝石の原石のような3人のアーティスト、Ayako Someya氏、ハシグチリンタロウ氏、山本尚志氏をこうしてご紹介できることは、至極の喜びである。

 

何れも今までの伝統書道の世界とは全く違う明らかに異質の存在。書の表現を愛し、あるいは媒介にし、追求し、思考と即興の積み重ねた、今、確かに呼吸をしている現代の「書」の姿である。これを芸術と呼ばずに何と呼ぶのか?

 

今後この稀有なアーティスト達がどのように時代の波をかいくぐりイキイキと光を放つのか、共犯者のごとく見守っていただきたいと切にお願いしたい気持ちでいっぱいである。

 

Gallery NAO MASAKI  正木なお

【書家:Ayako Someya】

 

私の考える書道の根幹には文字がある。

それは意味や読みを直接的に伝えることではない。

認識できない程に抽出した先にある何か。

極限まで研ぎ澄ますことで現れる何か。

その何かを考えた時、元素という概念に辿り着いた。

元素記号によって作り出された構造図は、あたかも物質そのものを表す文字のように感じられた。

私は自分の感覚に問いかけ、反応する。そして、文字と対峙し、追求し、探り得たものを重ね合わせていきたい。

1981年 東京都生まれ 

2003年 聖徳大学人文学部英米文化学科卒業。

大学在学中の留学をきっかけに英国に興味を持ち、以後数回にわたり渡英。

ホームステイ先の家族に書道を教え喜ばれたことで、いつしか日本の伝統書を外国人に教えたいと思うようになる。2007年 本格的に伝統的な書を学び始める。2012年より国内外での展覧会に参加。

伝統書から抜け出し更なる独自性を模索する中、現在に至る。

「ART SHODO TOKYO SPRING 2018」参加、書籍「ミライショドウ2」に掲載。

「ART SHODO TOKYO AUTUMN 2018」にて出品作が同展公式ポスターに選出される。

2018年12月、ギャラリーNOW「ART SHODO NOW」展(富山)

 

【書家:ハシグチリンタロウ / Lintalow Hashiguchi 】

 

情報過多の時代、スマホを見ているとニュース、SNS、いろんな人のいろんなことばが文字に変換されて溢れ返っている。ロジカルな世の中から押し出された断片的な文字やことばは、自然と周辺へと押し出されて、疎外され見落とされている。僕は、社会性や公共性からはみ出しているもの、破綻しているもの、使い道のないもの、を目一杯に書いて、世の中の端っこに置いておきたいと思っている。

1985年 長崎県生まれ。

2004年 福岡教育大学書道課程に入学。10代の頃に音と感情と言葉が混然となったパンクロックに出会い、創作活動の原点的な体験となる。伝統的な書道技術や美意識を学ぶも、60年代の舞踏や具体、岡本太郎などの前衛芸術に影響を受ける。特に前衛書の井上有一には多大な影響を受け、「書は万人の芸術」であり「日常から生まれた、日常を生きるためのエネルギー」との考えに至る。2008年 福岡 IAF shop*で初個展開催。以後精力的に作品発表を行う。2012年 日常から遠くなり高価な伝統的な毛筆を使うことをやめ、身の回りにある安価なタオルで書くようになる。2015年 井上有一の顕彰展「天作会」メンバーに抜擢。2016年以降はロックの音に着想を得て、アルファベットやギザギザとした音の波形のような作品を制作。2018年 「ART SHODO TOKYO」に選出、注目される。

【書家:山本尚志 / Hisashi Yamamoto 】

 

僕の書には必ず絵が登場する。でも、絵を描きたいわけではない。何かのお題として図形を描き、「これはなんだ?」といつも自分に問うのだ。つまり、お題をクリアするために、僕は初めて文字を書くことが出来る。そこでようやく「ひとりの書家」になれるというわけだ。このことは禅僧の公案(師から与えられた問題)を解くことに似た態度ではないかと最近では思っている。そうやって、僕は日々、自分の中の心の扉を開き続ける。書道とは、僕のそうしたことに対する唯一の手がかりであり、手段なのだろう。

 

1969年 広島市生まれ

幼い頃に左利きを右利きに直すために習字塾に通う。高校生で中国の古典臨書に親しむ中、習字塾で習う字が、ただ一人の字を真似しただけのものだと気づき、退会。1988年、東京学芸大学の書道科に進学直後に井上有一の作品に触れ、古典臨書をやめる決意をする。20歳の時に自室にて「山本尚志書家宣言」を行う。ウナックトウキョウにて井上有一カタログレゾネの仕事に従事した後、有一から離れる決意を固める。1993年、広島に戻り学習塾に就職後、学習塾を独立開業。教室をアトリエにし、10年間制作活動に没頭。2004年に海上雅臣氏に井上有一を顕彰する「天作会」の設立を打診され、作品発表。2015年にウナックサロンにて初個展「マシーン」、2016年には作品集「フネ」(YKGパブリッシング)、個展「flying saucer」(東京・ユミコチバアソシエイツ)を皮切りに、富山・ギャラリーNOW、東京・ビームスジャパン・Bギャラリーなどで展覧会を開催。2018 日本初の書道専門の現代アートフェア「ART SHODO TOKYO」を立ち上げる。

Gallery feel art zero (現Gallery NAO MASAKI)にてー2017年「ドアと光とガラスと水」

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